消化器内科
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは胃酸の逆流によるものですが、典型的な症状である胸やけ以外にも、のどの違和感、咳嗽などの症状を呈することもあります。胃カメラで観察すると、食道と胃の境目に炎症所見を認めます。
逆流性食道炎の原因
胃酸が逆流する一番の原因として食道と胃の間が緩くなる食道裂肛ヘルニアがあげられます。また暴飲暴食、肥満による腹圧上昇などもおおいに関係します。
逆流性食道炎の治療
胃酸の分泌を抑えるお薬が主体となりますが、生活習慣の見直しも大切です。眠前の食事を控える、腹八分目を心がける、体重を落とすなどの努力が再発予防に重要です。
食道がん
喉と胃をつなぐ食道にできる癌ですが、初期には自覚症状がありません。食事や水が飲み込みにくいなどの症状はある程度すすんでからでないと現われません。飲み込んだ時にすこししみるなどといったわずかな症状が続くときは、念のために胃カメラで検査することが大切です。
飲酒と喫煙がリスク
食道がんは飲酒と喫煙がリスクとなります。大酒家や愛煙家、フラッシャー(飲酒すると顔が真っ赤になる人)の方は食道がんのリスクが高いため注意が必要です。大酒家の人は「まだら食道」という癌ができやすい母地が広がっていることがあります。このようなリスクの高い方は毎年胃カメラでしっかりチェックすることが大切です。
早期がんの状態で見つけることが大切!
早期がんの状態(がんが表面にとどまっている状態)で病気を見つけることができれば、内視鏡(ESD)で治療することができます。ただし早期がんは微妙な変化でしかなく、病変を見逃さず拾いあげるには熟練の目と高性能な内視鏡システムが必要となります。特殊な波長のレーザーを用いて食道を観察し、疑わしいところがあれば拡大観察を行い診断をつめていきます。
注目されるバレット食道からのがん
近年注目をあびている食道がんとしてバレット腺がんがあげられます。逆流性食道炎を背景として出現するバレット食道が発生母地となります。欧米では食道がんの半分以上がバレット腺癌と言われていますが、日本では10%程度です。しかしピロリ菌未感染者(胃酸が多い)の増加、肥満者の増加によって、将来バレット腺がんが増加することが危惧されています。
慢性胃炎
本当の慢性胃炎とは
胃炎の定義は難しいものです。一般的には胃の調子が悪い状態が続くときに慢性胃炎といわれることが多いようですが、正確にはピロリ菌感染による持続的な胃炎がある場合を慢性胃炎といいます。(一時的に胃の調子がわるいときは機能性ディスペプシアとよばれる病態のことが多いです)胃の調子がわるい状態がつづいている、もしくは症状を繰り返している場合には、胃カメラでの精査をおすすめします。胃カメラで症状の原因となる器質的な疾患がないことを確認しておくことは大切ですし、ピロリ菌感染が疑われるときは除菌を行います。
特殊な慢性胃炎にも注意
慢性胃炎の多くはピロリ菌によるものですが、自己免疫性胃炎という特殊な胃炎があることも珍しくありません。自己抗体によって胃酸の分泌が著しく低下し、知らず知らずのうちに貧血の原因となることがあります。また胃がんだけでなく、胃カルチノイドといった特殊な腫瘍ができることがあるため注意が必要です。
ピロリ菌感染
きっても切れない胃がんとの関係
いちどは「ピロリ菌」という名前をお聞きになったことがあるでしょうか?特に年配者の方や、ご家族にピロリ菌感染がいた方は、感染している可能性が高くなります。ピロリ菌は幼少期に家庭内で感染し、症状なく持続感染しています。長い時間を経て「萎縮性胃炎」という慢性胃炎が広がります。この萎縮性胃炎を背景に胃がんは発生するのです。胃がんになった人のほとんどがピロリ菌の感染者であり、ピロリ菌に感染したことがなければ胃がんになることはほとんどありません。胃カメラでピロリ菌感染が疑われる場合には、感染診断をしたうえで除菌治療を行います。除菌をすることで胃がんの原因となる萎縮性胃炎の進展を止めるのです。胃がん予防という観点からは、萎縮性胃炎が広がる前に若いうちに除菌することが大切です。すでに萎縮性胃炎が広がっている場合には除菌後も胃がんのリスクが残るため胃カメラでの定期観察をお勧めします。
胃がんだけでないピロリ菌
ピロリ菌は胃がんだけでなく、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃リンパ腫、特発性血小板減少症などの様々な原因にもなります。年配になると血液をサラサラにするお薬を服用する機会や、腰痛や関節痛で痛み止めを服用する機会が増えるかと思います。これらはいずれも潰瘍の原因となることがあり、さらにピロリ菌が感染しているとそのリスクが高まります。さまざまな病気の原因となるピロリ菌感染をいちどはチェックしておくことをお勧めします。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
潰瘍はお薬でしっかり治せる
胃の痛みが長く続く場合には胃カメラを受けましょう。以前は胃潰瘍や十二指腸潰瘍で手術を受けていた時代もありましたが、現在は胃酸の分泌を抑えるお薬でしっかり治すことができます。しかしそれだけでは不十分で、再発予防のためには潰瘍の原因を突き止めることが大切です。潰瘍の2大原因はピロリ菌感染と痛み止めなどのお薬です。最近は服用者の増えている血液をさらさらにするお薬にも注意が必要です。ピロリ菌感染がある場合はピロリ菌の除菌を、薬が原因による場合には中止、もしくは胃薬の併用を行います。
潰瘍のふりをしたがんに注意
胃カメラで潰瘍の診断はつきますが、まれに潰瘍のふりをしたがんが隠れていることがあります。症状がおちついても、胃カメラでしっかりフォローしましょう。
機能性ディスペプシア
検査で異常を示さない胃症状
機能性ディスペプシアとは、胃カメラや採血などの検査では異常がないにも関わらず、胃もたれ、早期満腹感、胃痛といった胃症状が続く病態のことをいいます。命にかかわる病気ではありませんが、不快な胃症状のために仕事や勉強に集中できない、会社や学校に通えないなど、生活の質を大きく下げることが問題です。
お薬だけでなく生活習慣の見直しも
機能性ディスペプシアは、ストレスによって胃の動きをコントロールしている自立神経が乱されることが原因の一つと言われています。睡眠不足や食生活の乱れがないか見直しましょう。お薬としては胃酸の分泌を抑える薬をつかったり、胃の動きの調子を整える薬をつかったりします。消化器薬だけでは症状の改善が得られないときには、メンタルのお薬や漢方が有効なこともあります。症状を繰り返すことも多いので、多方面からの根気強いアプローチが必要です。
胃がん
胃がんはかつて日本人のがん死亡率の第一位でしたが、近年は減少傾向にあります。それでも人口高齢化の影響で罹患数ではまだまだ多くの患者さんがいらっしゃいます。胃癌を早期に見つけるためには胃カメラが欠かせません。一般的に健康診断で行われているバリウム検査では早期胃癌を見逃してしまう可能性があります。
胃がんとピロリ菌の深い関係
胃がんはピロリ菌感染と密接に関係しています。乳幼児期にピロリ菌に感染し、そのまま感染が持続すると知らず知らずのうちに萎縮性胃炎という慢性胃炎が広がります。症状は特にありませんが、胃がんはこの萎縮性胃炎を背景に出現するのです。胃カメラで観察すると、胃がんになりやすい萎縮性胃炎か、胃がんになりにくいピロリ未感染胃かが判断できます。ピロリ菌感染が判明した場合には、胃がん予防のためにも除菌治療を行いますが、除菌後も胃がんのリスクは残るため、定期的な胃カメラフォローをお勧めします。
早期がんの状態で見つけることが大切!
早期がんの状態(がんが表面にとどまっている状態)で病気を見つけることができれば、内視鏡(ESD)で治療することができます。ただし早期がんは微妙な変化でしかなく、病変を見逃さず拾いあげるには熟練の目が必要となります。萎縮性胃炎のあるかたは胃がんのリスクがあるため特に注意が必要です。
胃がんでは命を取られない
死因の原因として日本人には多い胃がんですが、内視鏡検査でしっかりフォローしておけば命を取られることはほぼありません。胃がんリスクは萎縮性胃炎の程度で評価できるため、リスクに応じた検査頻度を提案します。なによりも手遅れになる前に胃がんを見つけることが大切です。
大腸ポリープ・大腸がん
大腸ポリープには「腺腫」と呼ばれる腫瘍性ポリープと「過形成ポリープ」を呼ばれる非腫瘍性ポリープがあります。大腸がんの多くは腫瘍性ポリープである「腺腫」が長い時間をかけて成長、増大することが原因です。大腸がんは男女とも増加傾向ですが、なかなか気づくことができません。ポリープの状態では症状はまったくなく、血便や腹満などの症状が出てきたときにはすでに進行がんとなっていることが珍しくありません。
40歳になったら大腸カメラ検査を
みなさんが思っている以上にポリープはよくあります。40代では約40%、50代以上では約70%にポリープが見つかります。健診に含まれている便潜血検査を無視してはいけません。便潜血がいちどでも検出された場合には大腸カメラ検査を受けましょう。ただし便潜血検査が陰性でもポリープがないとは言えないことにも注意が必要です。
大腸がんの予防に有効な大腸ポリープ切除
大腸カメラ検査をした際に腺腫があった場合にはその場で治療を行います。がん化する前にポリープを切除することで大腸がんの予防に結びつきます。多くのポリープは痛みなくその場で処置を行うことができますが、ある程度大きなポリープは出血や穿孔のリスクがあるため入院治療を勧めることもあります。当院では長年内視鏡治療を行ってきた経験豊富な医師が検査を行っています。大腸ポリープ切除後も数年ごとに検査を繰り返すことで、早め早めの対応で大腸がんを予防することができるのです。
大腸憩室
大腸カメラ検査を行うと、「憩室」と呼ばれるくぼみがよく見られます。大腸のなかでも、上行結腸やS状結腸に憩室はよく見られます。無数に多発している方もいらっしゃいます。通常は特に処置を要すものではありませんが、憩室出血と憩室炎には注意が必要です。
高齢者に多い憩室出血
憩室出血は年配者の方で多く、腹痛のない血便が特徴です。出血量が多く、便器いっぱいの真っ赤な血便でびっくりされることが多いです。多くは自然に血が止まることが多いのですが、出血が持続することや、一時的に出血がおさまっても再出血することがあります。安全のために入院で経過観察することが望まれます。
持続的な痛みを呈す憩室炎
憩室がたくさんある方は憩室炎にも注意が必要です。なにかの拍子に憩室が細菌感染を起こし、化膿した状態となります。特定の部位が持続的に痛い場合には憩室炎の可能性があります。CT検査をすると病変部位に一致して大腸壁の肥厚、周囲の脂肪組織の毛羽立ちが特徴です。軽症の場合には外来での抗生剤内服治療、重症な場合では入院での抗生剤点滴治療が必要です。憩室炎がひどくなると穿孔(腸に穴があいてしまう)することもあるので注意が必要です。
過敏性腸症候群
大腸カメラ検査では特に問題がないにも関わらず、腹痛や膨満感などの腹部症状、下痢や便秘などの便通異常を繰り返す病気です。消化器内科外来でもっとも多い病気かもしれません。
様々な原因
原因としてはストレス、生活習慣のリズムの乱れ、食事のアレルギー、内臓知覚過敏などがあげられます。症状の発症状況などをよく伺うことでなにが原因かを推測していきます。もちろん一度は大腸カメラを受けて、症状の原因となるような器質的疾患がないことを否定しておくことも大切です。
一人ひとりに応じた多方面からの治療
命にかかわるような病気ではないのですが、仕事や学校生活に大きな影響を及ぼします。ストレスのかかる日常生活の見直しはもちろんですが、下痢の原因となるような脂肪の多い食事や乳製品を取り過ぎない、腸内環境を整えるために発酵食品や食物繊維を積極的にとるなど食生活も見直していきましょう。お薬としては様々なものがありますが、効果のでかたは人それぞれです。便性状を整えるお薬、腸内環境を整えるお薬、腸の動きを調整するお薬、漢方薬などを、症状に応じて様々なお薬を使います。
便秘症
頑固な便秘
女性や年配の方で便秘でお困りの方は多いと思います。一般的には水をよく飲む、食物繊維をよくとる、適度な運動が有効といわれていますが、なかなかコントロールできない便秘も多くあります。大腸がんによる閉塞症状を否定するためにいちどは大腸カメラ検査をおすすめします。そのうえで様々な便器薬をつかってみます。長年継続使用することの多い便秘薬ですので、飲みやすさ、費用などを考えて、お一人お一人に応じたお薬の提案を行います。
緩下剤と刺激薬
女性や年配の方で便秘でお困りの方は多いと思います。一般的には水をよく飲む、食物繊維をよくとる、適度な運動が有効といわれていますが、なかなかコントロールできない便秘も多くあります。大腸がんによる閉塞症状を否定するためにいちどは大腸カメラ検査をおすすめします。そのうえで様々な便器薬をつかってみます。長年継続使用することの多い便秘薬ですので、飲みやすさ、費用などを考えて、お一人お一人に応じたお薬の提案を行います。
緩下剤と刺激薬
便秘薬には大きくわけて2種類の便秘薬があります。便を柔らかくする緩下剤と、大腸の動きを活発にする大腸刺激薬です。一般的には刺激薬のほうが効果は感じやすいと思いますが、長期に使用すると「くせ」になってしまうことがあるので、緩下剤中心の薬剤を使いつつ、刺激薬は頓服で使用することをお勧めします。最近は新規の便秘薬が多数でてきました。人によって合うお薬、合わないお薬がありますので、相談しながら調整をしていきます。
潰瘍性大腸炎
長引く下痢、便に血液や粘液の付着が続いている場合には大腸カメラによる精査をお勧めします。潰瘍性大腸炎では肛門から連続性に粘膜障害が広がっているのが特徴です。潰瘍性大腸炎は近年増加しており、全国で20万以上の患者様がいらっしゃいます。決して珍しい病気ではありません。
潰瘍性大腸炎の症状
肛門から連続性にただれた炎症粘膜が広がります。肛門に近い直腸に炎症が限局したものから、全大腸に炎症がひろがっていることもあります。便にちょっと血がつく、少し下痢気味といった軽いものから、腹痛とともにゼリー状の粘血便が10回以上も出るといった重いものまで、さまざまな症状があります。いちど発症すると、下痢や血便などの症状がある状態(活動期)と、治療により炎症がおさまった状態(寛解期)を繰り返します。
潰瘍性大腸炎の原因
現時点では病気の根本的な原因が解明されていませんが、①免疫異常 ②腸内細菌の乱れ ③遺伝的要素 ④食べ物や化学物質などの環境因子などの要因が重なりあって発症する病気と考えられています。
潰瘍性大腸炎の治療
炎症が広がっているときには、まずはしっかりおさえる治療(寛解導入)を行います。病態に応じて様々な薬を使います。炎症がいったんおちついたならば、再燃しないための治療(維持療法)を続けていくことも大切です。
クローン病
おもに小腸や大腸にびらんや潰瘍などの炎症がおきる病気です。潰瘍性大腸炎とともに炎症性腸疾患(IBD)と言われています。近年増加傾向であり、全国で7万人以上の患者さんがいらっしゃいます。とくに15歳~30歳くらいまでの若い方(男:女=2:1)に多く認められます。
クローン病の症状
腹痛、下痢をはじめとして、倦怠感、貧血、痔瘻、発熱、血便など多彩な症状を呈します。クローン病ではこれらの症状が悪くなったり(再燃)、良くなったり(寛解)を繰り返すことが特徴です。クローン病の腸管合併症としては、狭窄、穿孔、膿瘍などがあり、この場合には手術が必要となります。また腸管外合併症として、皮膚や関節にも多彩な症状をきたすことがあります。
クローン病の原因
現時点では根本的な現因が解明されていませんが、①免疫異常 ②遺伝的要素 ③環境因子 などの要因が重なりあって発症する病気と考えられています。
クローン病の診断方法
大腸に炎症がある場合には大腸カメラで評価することができますが、クローン病では小腸に病変があることも多く、その場合にはカプセル内視鏡、小腸内視鏡、CT、MRI検査などを組み合わせて評価を行います。
クローン病の治療
まずは腸管の炎症をしっかりおさえること(寛解導入)が目標となります。最近では生物学的製剤や抗体製剤といった新しいお薬が次々と開発され、従来内科的なコントロールが難しかった症例でもコントロールできることが多くなっています。また成分栄養剤や消化態栄養剤といった栄養療法も有効です。できるだけ手術を回避できるように再燃しないための治療(維持療法)を続けることも大切です。
肝機能異常
健診で肝機能異常を指摘される方は多くいらっしゃいます。原因の多くは、脂肪肝やアルコール性肝障害などがあげられますが、なかにはウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎などのまれな疾患が隠れていることもあります。また薬剤による肝障害をきたすことも稀ではなく、服用しているお薬のほか、サプリメントや健康食品の摂取歴にも注意が必要です。問診、採血検査、腹部エコー検査などの情報を参考に診断をすすめていきます。
脂肪肝
肝臓に余分な中性脂肪がたまると脂肪肝になります。炭水化物(とくに糖質)の取りすぎや慢性的な飲酒が原因となります。脂肪肝といっても脂肪の取りすぎではなく、糖質の取りすぎが大きな原因です。過剰な糖質は肝臓で中性脂肪として蓄えられます。健康診断の腹部エコー検査で脂肪肝を指摘される方は非常に多く、男性の約40%、女性の約20%が脂肪肝と報告されています。
自覚症状がありません
脂肪肝があっても自覚症状はありません。一部の脂肪肝は肝硬変に進展するものがあります。倦怠感や腹水貯留、黄疸などの症状がでてくるのは肝硬変となってからです。肝硬変からは肝がんが発生することがありますが、肝硬変に至る前の段階でも肝がんが発生することがあるので注意が必要です。
脂肪肝の根本的な薬をありません
脂肪肝を治す根本的な薬はありません。食事の見直しや運動が中心となります。脂肪肝の方は、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を合併していることが多く、それらに対する薬物治療を行うことがあります。炭水化物(とくに糖質)の取りすぎに注意し、肥満のあるかたはダイエットを心がけましょう。節酒も心がけましょう。
アルコール性肝障害
長期にわたる過剰の飲酒が原因と考えられる肝障害です。採血検査ではγGTPの上昇、AST優位の肝機能異常を呈します。禁酒によってこれらの数値が改善することも特徴的です。過剰な飲酒歴(エタノール換算60g以上)の聴取と、ウイルス性肝炎などのほかの疾患を否定したうえで診断をつけます。
アルコールの依存性
アルコール性肝障害に自覚症状はありませんが、アルコールには身体的、精神的依性あり、放置すると肝硬変へ進展するリスクが高まります。肝硬変になると倦怠感、黄疸、腹水貯留などの様々な症状を呈するほか、肝がんが生じることもあります。
お酒との上手なつきあい
適度な量のお酒との上手なつきあいが大切です。人それぞれ適度な量は異なります。定期的に採血や腹部エコー検査によるチェックを受けて、お酒とうまく付き合っていきましょう。
B型肝炎
B型肝炎ウイルスが血液・体液を介して感染するのが原因となる肝炎です。
出生時の感染
出生時に母体から子供に感染する垂直感染では、免疫寛容のためウイルスが排除されず、持続的にウイルスが存在し続ける状態(無症候性キャリア)に移行します。思春期を過ぎると自己の免疫がウイルスを異物として認識するようになり、一過性に強い肝炎を起こしたあと抗体を獲得しウイルスが少ない状態(非活動性キャリア)に変化します。およそ80~90%の人はこのまま肝機能が一生安定しますが、残りの10~20%の人は肝炎の状態が持続します(慢性肝炎)。2016年以降は出生時にワクチンが接種されるようになりました。
成人の感染
以前は輸血や針の使いまわしで感染するケースが多くありましたが、現在はほとんどなくなりました。それでも性的接触や刺青などの行為が原因となることがあります。成人での感染では慢性化しにくく、一過性の感染で終わることがほとんどです。しかし既往感染であったとしても肝臓のなかにウイルスのDNAは残っています。抗がん剤やステロイドなどで免疫抑制の治療を行うと、潜伏していたウイルスが再活性化することがあります。必ず
慢性肝炎では肝がんに注意
慢性肝炎では肝硬変や肝がんに注意が必要です。採血検査や腹部エコー検査による定期的なチェックを行いましょう。
抗ウイルス薬やワクチン接種が有効
肝臓の炎症の数値が高くウイルス量も多いに場合には、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を服用し、肝炎を沈静化させることが重要です。またB型肝炎には感染予防に効果的なワクチンがあります。B型肝炎の流行地域に渡航する前に接種することが効果的です。
C型肝炎
C型肝炎ウイルスが原因となる肝炎です。以前は輸血や針の使いまわしによる感染が多くありました。感染後、一部は一過性で自然治癒しますが、多くは慢性化しC型慢性肝炎となります。C型慢性肝炎が長期間持続すると肝硬変、ひいては肝がんのリスクが高まります。現在はC型肝炎ウイルスを駆除するお薬が開発され、肝硬変予防、肝がん予防に大きな成果をもたらしました。
肝硬変
慢性的な炎症が持続すると肝臓に繊維化が起こります。原因として以前はC型肝炎やB型肝炎、アルコール性肝炎が多かったのですが、最近は脂肪肝からの肝硬変が多くなっています。
肝硬変が進行すると
肝硬変が進行すると倦怠感、むくみ、黄疸、食欲不振、腹水、脳症などの多彩な症状がみられるようになります。また知らず知らずのうちに食道静脈瘤が発達し、突然の大量吐血で急変する方もおられます。
肝がん発生に注意が必要
線維化のすすんだ肝硬変は肝がんの発生母地となります。定期的にエコー検査やCT検査を受けることで、発がんに備えることが大切です。
肝がん
肝臓に発生するがんです。肝硬変から発がんすることが多々みられます。肝がんの大きさ、発生個数、肝機能などを考慮し、手術、ラジオ波焼灼治療、肝動脈塞栓術、薬物療法などが選択されます。信頼のおける肝臓専門医をご紹介させていただきます。