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脂肪肝って脂肪の取りすぎではありません!

[2025.05.06]

健康診断や人間ドッグで肝機能異常を指摘されて受診される方が多くいらっしゃいます。きっと受診せずに放置されている方もだいぶ多いと思います。しらべてみると多くの方が脂肪肝によるものです。今回は脂肪肝について人類の進化もふまえてお話してみたいと思います。

脂肪肝って何?

肝臓に脂肪が蓄積した状態を脂肪肝といいます。脂肪肝にはお酒が原因のアルコール性と、お酒をあまり飲んでいないのに脂肪がたまってしまう非アルコール性があります。脂肪肝の方は非常に多く、有病率は9~30%とされ、少なくとも1000万人以上と推計されます。肝機能異常でいらっしゃる方の多くが脂肪肝といっても過言ではありません。今回は特に非アルコール性の脂肪肝についてお話します。肥満と関係していることが多いですが、太っていなくても脂肪肝のことも珍しくありません。

なぜ脂肪肝ってよくないの?

脂肪肝そのものには自覚症状がありません。脂肪肝というお話をすると、ちょっと最近太り気味か・・・と軽く見られがちです。しかし脂肪肝をあなどってはいけません。
肥満を基盤に、糖尿病、高血圧、コレステロールなどの生活習慣病が起きてくる病態をメタボリック症候群と呼びますが、そのなかでも脂肪肝は比較的早期に現れることが多いといわれています。脂肪肝と診断されたときからすでに合併していることもありますが、脂肪肝と診断されてから糖尿病や高血圧を合併してくることが多いです。これらは動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすことになります。
また一部の方(10~30%)の方は、MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)といって、慢性炎症による線維化が加わり、肝硬変や肝がんに進展するリスクがあります。肝硬変になると腹水がたまったり、黄疸がでたり、静脈瘤が破裂したり命にかかわります。また肝硬変になると肝がんのリスクも高まります。この状態になると元に戻ることはできません。

脂肪肝は炭水化物の取りすぎが原因です!

脂肪肝は主に炭水化物および糖質の取りすぎが原因です。(飽和脂肪酸の取りすぎも原因となりますが、そんなに肉の脂やバターなどを取りまくっている人はあまりいないと思います)
炭水化物と糖質は小腸でブドウ糖に分解されて血液中に吸収され、エネルギー源として利用されます。しかし使いきれなかったブドウ糖は肝臓で中性脂肪に変換され、エネルギーの備蓄として蓄積されます。また、肝臓で作られた脂肪が血液を介して皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられ肥満の原因となります。これは人類の長い進化の歴史のなかで獲得した飢餓に耐えるためのメカニズムなのです。

脂肪肝の治療

脂肪肝に対する特効薬は残念ながらありません。もっとも効果的な対処法は炭水化物および糖質の取りすぎをやめることです。これらは肥満や糖尿病の予防および治療にも役立ちます。

飢餓に耐えるために進化した人類

考えてみれば人類は飢餓に耐えるように進化してきたといえます。体にエネルギーを蓄えられる体質をもったものが飢餓を生きのび、子孫をつないできたとも言えます。私が子供の時にならった人類の祖先「アウストラロピテクス」がいたのは400万年前、そこから新人といわれる私たちの直接の祖先「ホモ・サピエンス」が出現したのが20万年前、それからもずっと飢餓との闘いだったことは想像に難くありません。日本でいえば縄文時代までは、木の実などの採集や狩りなどの狩猟生活であり、常に豊富な食べ物があったわけではなく、餓死と隣り合わせだったわけです。それが弥生時代に稲作がはじまったことによって、はじめて食べ物を蓄えられるようになりました。そしてつい60年ほど前の高度経済成長のあたりから過食時代に突入したわけです。人間の長い長い進化の歴史のなかで考えれば、炭水化物を多く取るようになったこと、ましては過食となったことなどは、ほんの微塵にもならないような短い時間です。脂肪肝がおこるような環境に人間の遺伝子が対応していないことは明らかです。

糖質依存症とのつきあい方

お米、ラーメン、パスタ、ケーキ、お菓子、ジュース、フルーツ、どれも本当においしいですよね。われわれは子供のときからずっと食べ続け、すっかり糖質の依存症になっているのだと思います。すでにおなか一杯でも、「しめのラーメン!」「デザートはべつばらー!」といって食べられますよね。私もコーラがやめられません。麻薬依存やアルコール依存というと社会や周りの人に迷惑をかけるため拒絶されますが、糖質依存はどうでしょうか?太っていても周りの人はあまり影響がないので後ろ指をさされることはありませんが、自身の体に大きなリスクを背負っているということを考えてみてください。ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞が起こる可能性があるということです。
では、健康のために炭水化物を拒絶して、昔の採集・狩猟生活にもどれるでしょうか?私はそんなことはできません。おいしいものを食べたいし、それが日々の活力、喜びになります。「わかっちゃいるけどやめられない」ことは食べ物以外でもいろいろあります。どんなことにも言えますが、全部だめというのではなく、そこは理性で加減を考えるということが大切なのではないかと思っています。

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